★ 「フンしのええメンタ」‥‥糞の躾のよいメス。これはまあ、ペットのことですねえ。
★ 「小柳彦九郎」‥‥色事の話に出てくる武士の名前だが、芝居にも関係がある。近松門左衛門の「堀川波鼓(ホリカワナミノツヅミ)」という芝居に落語と同趣向で出てくる。というより、落語の方がパクッているのである。こちらでは小倉彦九郎という名前になっている。この芝居、私は中村鴈治郎(もうすぐ坂田藤十郎)さんの近松座公演で見た。テレビ放送でしたが……。
★ 「南地五花街」‥‥ミナミの遊郭、宗右衛門町、櫓町、坂町、難波新地、九郎右衛門町の五つ。故香川登枝緒先生(我々の世代の方はご存じと思うが「てなもんや三度笠」の作者である)にこのことを質問したことがある。香川先生という方は本当に気さくな方で、当時20代の我々の質問にも丁寧に答えてくださったし、アドバイスもしていただいた。何より若手の落語を聴きに小さな落語会にまで足を運んでおられた。ここらが最近えらそうに教授、先生と呼ばれている評論家諸氏と大きく違うところである。香川先生は質問に対して分からない時はちゃんと覚えておられて、次に会った時に「調べたらこうやった」と必ずご教示いただいた。南地五花街だけは「調べとくわ」とおっしゃって、それきり会えぬまま病気でお亡くなりになった。この答は牧村史陽編「大阪ことば事典」に載っていた。
★ 「正巳の刻(ショウミコク)」‥‥昔の時の数え方は「時うどん」でお馴染みの「九つ、八つ、……四つ」という数え方の他に干支も使った。子の刻が午前0時。あとは2時間ごとに丑、寅、卯の順。正巳の刻は午前10時ジャストになる。この2時間後が正午の刻、つまり今も使っている正午です。
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