落語用語の基礎知識
落語は古い言葉、今は使われなくなった言葉がたくさん出てきます。それを独断と偏見、
米二流解釈で解説してみました。ですから決して世間で通用するものではありません。
参考文献

 牧村史陽編「大阪ことば事典」講談社学術文庫
 前田勇編「上方語源辞典」東京堂出版
 井之口有一・堀井令以知編「京ことば辞典」東京堂出版

あ〜お / か〜こ / さ〜そ / た〜と /  な〜の /  は〜ほ /  ま〜も /  や〜ん / 
煮売屋
☆ 「道者(ドウシャ)」‥‥講を組んで神社、仏閣、霊場などを連れ立って参詣する旅人。「百人坊主」という噺はこの道者が主人公になっている。

☆ 「あか」‥‥銅のこと。赤金(アカガネ)の略。オリンピックで3位になったら、あかメダルと呼んでください。そうでないとこの言葉も死語になります。

☆ 「照らし」‥‥遊郭では太い格子の中にお女郎さんが並んでいて、客が品定めをしていた。ここから転じたものでしょう。商品を陳列する入れ物のこと。この場合はおかず。昔の大衆食堂、今なら「ザめしや」を思い浮かべてください。作り置きのおかずの一つ一つはわりと安いが、ついたくさん取ってしまい高くつきます。計略やね。ちなみに「ザめしや」は和食カフェテリアと呼ぶそうな。わけわからん……。

☆ 「生節」‥‥鰹の生と鰹節の中間に当たるもの。一種の保存食。鮪はとんぼ節と言うが桂都んぼ君とは無関係。

☆ 「銘酒」‥‥名酒ではなく銘酒。要するに名前がついたお酒。今なら当たり前だが、昔の小売酒屋は自分の店でオリジナル・ブレンドの酒を調合して売っていた。酒屋の腕の見せ所でもあったわけです。したがってこれは銘酒ではない。銘酒は造り酒屋のオリジナルですな。

猫の忠信
☆ 「義経千本桜」‥‥歌舞伎、文楽で「仮名手本忠臣蔵」「菅原伝授手習鑑」と並んで三大名作と称される。名作だけあって各場も有名で「鮓屋」「渡海屋」など私はよく見ている。「吉野山」は舞踊の名作だし、「川連法眼館」は俗に「四の切」と言い、市川猿之助さんの宙乗りで有名だ。登場人物は源義経を始め、弁慶、静御前、亀井片岡伊勢駿河の四天王等々。忠信は佐藤忠信だが、これは狐が化けている設定になっている。べつに本物の忠信も登場するのでややこしい。「猫の忠信」という噺は全編がこの「千本桜」のパロディになっている。前半に出てくるいやな男、六さんも亀井六郎から来ている名前なのだ。

☆ 「建て」「見取り」‥‥建てというのは通しのこと。「猫の忠信」の場合なら「千本桜」を全部、あるいはほとんどを初めから通して演じること。見取りはいわば「ええとこ取り」になる。いろんな出し物から有名なところを少しずつ演じる。師走の南座、顔見世興行は見取りの典型である。

寝床
☆ 「ひろうす」‥‥ひりゅうずとも言い、漢字で書くと飛竜頭。元来はポルトガル語のfilhosから来ている。今はガンモドキのほうがわかりやすい。現在は豆腐が主原料だが、昔は米の粉、麩、こんにゃくなどを揚げたものもあったらしい。

☆ 「頼母子(タノモシ)」‥‥これは落語によく出てくる。頼母子講。無尽(ムジン)とも言う。サラ金の「ムジンクン」はこれの洒落ではないかと思ったことがあったが、小佐田定雄氏に「サラ金にそんな洒落っ気はない」と否定された。要するに、手っ取り早くお金を集める手段であった訳だ。何人かで講を作り、毎月掛け金を持ち寄って、一人がその全額を持ち帰る。その人は、翌月から返済という形で掛け金を持ってくる。お金が必要な人を救済するシステムでもあった。これがたいへん流行したらしい。

☆ 「観音講」‥‥観世音菩薩、要するに観音さんの教えを説き聞かせる法会。この講の類はたくさんあった。阿弥陀講、稲荷講、地蔵講、大師講等々。

軒づけ
☆ 「義太夫節」‥‥関西で浄瑠璃といえばこれ。元禄頃、竹本義太夫が当時流行していた各種音曲を取り混ぜて節付けした。門人、豊竹若太夫が別に一派を起こし、竹本・豊竹の二派に分かれた。現在、文楽の太夫さんも竹本か豊竹のどちらかを名乗っておられる。私は竹本角重師匠という女性の師匠にお稽古をしてもらった過去がある。でもこのお師匠さん、大正2年生まれです。なお文楽の太夫さんの名前は「○○大夫」と「大」の字を使う。なぜなんだか知らない。

☆ 「よさこい」‥‥高知県民謡「よさこい節」。「土佐の高知の播磨屋橋で……」と昔は有名だったが、今の若い人はご存じない。元唄は僧純信と娘お馬の悲恋を唄ったもの。お馬ってどんな娘でしょ? 名前から顔を想像すると恐ろしい。「よさこい」とは夜に来なさいの意味。色っぽいけど、馬はちょっと遠慮申し上げる…。

☆ 「味噌が腐る」‥‥下手な歌を罵って言う言葉。もちろん浄瑠璃も該当しますな。腐った味噌がどんな味なのかは知らない。しかし味噌って腐るのでしょうか?

野崎詣り
☆ 「野崎観音」‥‥大阪府大東市にある曹洞宗の禅寺。本名は福聚山慈眼寺(フクシュウザンジゲンジ)という。野崎観音は芸名……ではなくて俗の名前。行基作と言われる十一面観音が本尊。

☆ 「深草の少将」‥‥日本美人の元祖、小野小町から「百夜の間、通ってきてくださったら、貴方の想いを叶えましょう」と言われ、九十九夜まで通い、百日目に寒さのため凍え死んだというウソか本当か分からない伝説が残っている人。落語の中ではこれのシャレが出てくるが、このシャレ、伏見深草近辺でやった時はたいへんよく受けた。さすが地元と感心したことがある。

☆ 「小粒」‥‥一分金のこと。江戸時代の一両小判の4分の1。「野崎詣り」の時代設定は明治だが、当時でも小粒はかなりの値打物であった……と思う。

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