2002-01-23
 斑尾高原
 
新年のご挨拶を申し上げるべきところ、遅くなって申し訳ありません。暮れから新年にかけて、私の周りではいろんなことがありました。まず、悲しいことがありました。兄弟子の桂歌之助が2日未明に亡くなってしまいました。昨年9月に入院してから、あっという間の旅立ちでした。近い存在の人だっただけに、今でも帽子をかぶったいつもの姿で、フラッと楽屋へ入って来そうに思います。…合掌。

そのあとすぐ、うちの一家4人は信州、斑尾高原へスキーに行きました。私が運転する車で行ったのですが、雪道に馴染みのない私が苦労したのは言うまでもありません。ことにその頃、寒波襲来で大雪でした。

まず、長野県までたどり着けないところから困難は始まりました。雪のため、中央自動車道の小牧から中津川までが通行止。ふだんなら、半時間あまりで通り抜けられるところ、一般道をチンタラチンタラ…。それでも初めはよかったんですよ。道も間違わず順調に行ってましたから。それが途中からピタッと動かなくなる大渋滞。地図を見ると、国道に沿って別の道がちゃんとあるではないですか。この道が私を呼んでいる、と感じましたね。だいたい私の第六感が当たらないのは自分でも分かっているのですが…。それをよく知る妻の目も冷たかった。

選んだこの道、理想的な道なんですよ。対向車さえ来なければ、という条件付なんですけど。細い、狭い、そこへ積雪です。向こうから車が来る度に行き違いのため動かなくなる。前の方に先が読めないヤツがおるんでしょう。とことん突っ込んで行くから、にっちもさっちも行かなくなるんですよ。道の両側の家の雪かきを見ながら、時間はむなしく過ぎて行くのでした。ここに住んでる人たちも、他府県ナンバーの車に道を占領されて災難ですな。

結局、5時間近くかかって中津川のインターチェンジへたどり着きました。遅れを取り戻すべく、そこから飯山までは一直線。しかし、飯山の町は雪降り真っ最中。大の苦手のチェーン着装に、これまたたっぷり時間を取られ、斑尾へ向かいます。昼過ぎに着くはずが、もう日が暮れてしまいました。山道をズルズル滑りながら上って行きます。途中調子に乗ってスピンすること2回。だんだん怖くなってスピードを落とすと、車が停まりそうになる。停まったら最後、もう動き出すことは不可能な気がして怖いのなんの…。やっとホテルへ到着したときにはクタクタでございました。

あくる朝、車は駐車場と一体化して雪に埋もれていました。とりあえずの雪かき。帰るのはまだ次の日ですが、このままでは車が雪に潰されてしまいます。こういう時に家族はありがたいもの。大きなスコップを持って手伝ってくれます。小学生の息子が突然言いました。「あ、ワイパーが折れた」

見ると雪道になくてはならないワイパーが真っ二つに。幸いなことに、これはリアワイパーでした。それにしても無茶するヤツです。その後、スキーに出かけましたが、雪は降り続いています。夕方見ると車はまた埋もれてます。今度は誰も手伝ってくれませんが、二度目の雪かき。結局帰るまでにもう一度、計三度の雪かきを体験しました。無事に車が動いた時には感激で落涙ものでした。実は去年は自力で動かなかったものですから…。

腕のしびれを抱えて、無事に信州から帰ってきて、噺家に復帰した桂米二でございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。