2004-09-28
 ディズニーとはとバス(1)
 
今時分になってから、なんなんですが、我が家の夏休みのご報告をいたしましょう。お盆休みの頃は家内も会社がお休みです。私は滅多に仕事が入りません。てなわけで、ちょいちょい無理して何処かへ出かけますねん。いつも行き先は家内の会社、ニッセイの提携先で安く泊まれる宿と相場が決まっております。で、今年選ばれた宿は千葉の幕張にありました。この辺りで泊まるとなれば目的地は……。そう、あのディズニーなんたらですがな。お父さんの意見はちっとも反映されないのです。(わたしゃ、九十九里浜で魚を食べたい……)

ディズニーランドへは9年前に一度行っております。その時はニッセイと提携していて1部屋1泊1万円で泊まれるホテルがありました。あのテレビドラマ「ホテル」のロケが行われたヒルトン東京ベイです。食事は付いてないけど、4人泊まって1万円はムッチャ安い! けど、わたしゃこのホテルが嫌いや。冷蔵庫の缶ビール、レギュラー缶が800円もしたんです。近くにビールを売っているところがないことにつけこんでの悪事ですな。こんな横暴封建的なるホテルを、あなたは何故許すのですか!!!

また興奮するといけないので、今度は幕張のホテルにしました。缶ビールは重くても持って行きましょう。ここに2泊します。問題はそこまで何で行くかですわ。前は子どもが小さかったのでクルマで行きました。今は2人ともトドみたいになったので、狭過ぎます。運転は疲れます。新幹線は予算不足。家内は深夜バスが良いと主張しました。

私は10代の頃、東京へ芝居を見に行くのに何度か深夜バスに乗りました。若いっていいですね。何処でも寝られました。それから15年後、武道館でエリック・クラプトンを見た帰り、久しぶりに深夜バスに乗りました。その15年の間に、私の体に異変が……。私はお酒を飲まないと寝られない体に変貌をとげていたのでした。8時間ほどバスに乗って寝たのは10分ほどかな? そこそこ飲んでたんやけど。トイレは行きたくなるし、地獄の苦しみを味わいました。それを思い出したので、

「あんな苦しい思いをするんなら、夜中ずっと運転してる方がマシやわい!」

しもた! 言うてしもた。もう手遅れです。狭いのは辛抱してクルマで行くことになりました。しんどいでぇ……。その時は皆様お馴染みの15年ものシビックで行く予定でした。ま、いろいろありましてクルマは中古で購入したストリームに替わりましたけど。それについては日経ネット「京の噺家桂米二でございます」をご覧ください。(白状しますが、まだ一度もローンを払ってません。10月からなんです。なんかもらったような気がしますな)

それではここで旅行のスケジュールを発表します。8月13日(金)ディズニーシー、14日(土)ディズニーランド、15日(日)東京駅へ出て、はとバスに乗る。ジャラーン、どうです、このギャップの大きさは……。

出発は前日、12日の夜11時を予定していました。乗って行くストリームは午後4時に納車されたばかり。その7時間後に慣れないクルマで千葉まで行くのです。各方面から無謀とのお声をいただきましたが、15年ものシビックで行く方がどう考えても無謀なんです。タイヤに溝がないんやも〜ん。

結局、出発したのは日付が替わった午前0時。名神から中央道へ入り、駒ケ岳サービスエリアで30分休憩。いつものソースカツ丼のタレを買い求め、信州経由で東京へ。渋滞は覚悟の旅でしたが、真夜中だったのと、帰省ラッシュとは逆方向のお上りさんということもあって、幸いなことに渋滞との遭遇はなし。やれやれ。午前5時過ぎに首都高速へ。えらいもんですなあ。ここはやっぱりクルマの多いこと多いこと。レインボーブリッジを渡って千葉県は浦安を目指しました。

午前6時、浦安に着きました。ここまで6時間。早いねぇ。ちょっと早過ぎかな? クルマが快調なもんで……。

さて、ディズニーシーを目指すクルマの群れは、先を競って抜きつ抜かれつのバトルを繰り返して駐車場へ吸い込まれて行きます。みんなアホちゃう? 朝早うからこんなとこ目指して。前の晩から寝てへんオレはキミらとは別やで、言うとくけど……。

開門は8時です。ここでは落語「動物園」の常識は通用しません。こういうところはフツー10時頃に開くもんですよ。とは思うけど、もっと早う開けてくれません? 常識はずれの長い行列が門の前から続いてるところへさして、お日さんがさんさんと降り注ぐもんやさかい、アッツイのアツナイの……。この先が思いやられます。

6時過ぎから並んだ甲斐あって、わりと早めに入場できました。わたしゃ、ヘトヘト。寝てへんのやもん。それでもお父さんは弱音を吐きません。行列2時間待ちモードで戦闘態勢。なのに家内はさっさとなんとかインフォメーションへ入って行きます。プレミアムツアーを申し込むと言うてます。タダやおまへん。その値、4人で1万5千円。ここにもアホが居ます。ここまですでに1人5千円以上払ってるんですよ。この上何が悲しゅうて……。

「今度いつ来れるか分からへんでしょ! 私が払います!」

鶴の一声に「ハイッ」としか答えられなかったパパでした。さすがうちのかみさん、ディズニーシーのお勉強をしてはります。皆さん、この別料金のツアーってご存じでしたか? ランクがあるのですが、このプレミアムは一番高い。その代わりいろいろ特典があります。まず人気アトラクション、4つまで待たずに乗せてくれます。仮に全部2時間待ちとすると単純計算で8時間の節約ですわ。それからガイドのお姉さんがつきっきりで世話してくれはります。世話というても下の世話まではしてくれませんよ。

うちの担当はNAKACHIさん。日本人ですよ。漢字は分かりません。名札はローマ字で書いてあったのです。超可愛いんです、この人。なんならツーショットで写真撮ったので、お見せしますよ。このお姉さんだけで1万5千円の値打ちが……。喉元まで出た言葉を私は飲み込みました。今日は家族連れなのでした。

NAKACHIさん、いろいろと解説しながら歩いてくれます。ディズニーシーの中には実際に営業しているホテルも入っています。そのホテルの窓をよく見てくださいって言うんです。子どもらはボーッとしてますが、ダディはすぐに気がつきました。そう、描いてあるんです。窓はさすがに本物です。そらそうやろ、中で人間が動いてるもん。けど窓枠、庇、雨戸は絵なんです。雨戸なんか実によくできてます。日本みたいに横へスライドさせるのではなく、蝶番がついてバッタンと開けるやつです。半開きのものもあるし、全部開いてるものもある。うーむ、ディズニーも経済的に苦しいのですねぇ……。

違うそうです。わざとなんです。これはトロンプルイユ(わっ、やっと覚えた!)と言って芸術なんです。ヨーロッパではよくある手法でこれを専門にする絵描きさんが居るそうです。(けど初めは経済状態も関係があったと思いますよ)その絵描きさんをわざわざイタリアから呼んでここへ描かせたんですって。やっぱりディズニーは持ってはるねん……。

落語検定5級の免状をお待ちの方はもうお気づきでしょう。はい、これは「かきわり盗人」ですね。世帯道具がないので壁に箪笥や床の間の絵を描いて、あるつもりで暮らし始める男の悲話、これと同じ趣向なんです。こんなアホなこと考えて落語にするのは日本人だけや、と思うてましたが、外国ではほんまにやっとおる! それも外へ描くやなんて……。

こんなことを教えてくれたNAKACHIさん、大好きです。これだけでも1万5千円の値打ちが……。感心して歩いているとNAKACHIさんは次の説明にかかっていました。富士山みたいな山が見えています。

「あちらに見える大きな山がプロメテウス火山です」

「ほう、よくできてますねぇ。あれも壁に描いてあるのですか?」

「……違いますよー」

NAKACHIさんはケラケラ笑ってます。ああ、受けた受けた。

「あれは描いてません。本当の火山です」

嘘つきーッ。大きな嘘をつきますなぁ……。

「下を見てください。飛び散った溶岩で焦げた痕がついてますよ」

これは驚いた。なるほど道には本当に焦げ目がつくってあるんです。しかも、プロメテウスのやつ、時々ほんまに火ィ噴くんです。浅間山の手前もありまっせ。ちょっとは遠慮したらええのに。それでもまあ、ようやりますなぁ、ディズニーさんも。ここに居てたらどれだけ騙されるか分からへん。おかげで眠いのは何処かへ飛んで行ったけど……。

さて、ディズニー珍道中はいかなることに。続きは次回のお楽しみ……。つづく。