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2004-03-18
市バスに忍び寄る |
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すっかり春めいてまいりました。花粉症の皆様には心からお見舞いを申し上げます。おかげさまで私は無事です。花粉症の前に鼻炎ですから似たようなところはあります。お気持ち、少しは分かりますよ。
さて、今年に入っても私の低迷は続いております。よいことは起こりません。ことに車関係はお祓いをした方がよいのかもしれません。接触事故が二度。立派なものです。怪我してないだけ儲けものと言えましょう。
それはまだ寒い日でした。うちから近い東大路通、東山三条を下ったところにN眼科があります。そこへ用事がありました。入荷した嫁のコンタクトレンズを取りに行くのです。車を停めようとしたら、その真ん前が市バスのバス停でした。用事はものの3分もかからないので、バス停の手前、少し離れたところへ車を停めました。これならバスにもそんなに邪魔にならないと思ったのです。
車から降りようとした時、後ろから市バスがやって来ました。でも大丈夫……ではありませんでした。一ぺんに3台もやってきよったんです。おいおい、バラバラに来てよ。団体は困りますがな。またその威圧感がすごいすごい。3台目は私の真横にピッタリ付いてます。こらもう逃げなしゃあない。
再びエンジンをかけてバックさせました。そろそろ、そろそろと…。左側に歩道の縁石があります。それを避けようとハンドルを左へ切ったのが間違いでした。車はバックする時にハンドルを切ると、前輪が外へふくらんで曲がります。左へ切ると右へふくらむのです。上半身を左へ捩り後ろを向きながら車をバックさせる私に、前から「ズルズルズル……」という厭な音が聞こえました。ふと見ると、前のバンパー、右の隅っことバスの左わき腹後方がひっついてるやないですか。アチャーッ!
バスの運転手はさすが敏感です。運転席から一番遠い「ズルズル」に気がつくとはあっぱれ! すぐに降りて来はりました。私は真っ青!
傷口を見てはります。私も見ました。黒い筋がスーッと横へ流れています。うちの車(ご存じホンダ・シビック15年物)はというと、バンパーのゴムに細かい傷が……。待てよ。こんなん前から一杯ありますがな。車庫入れの時、何度もブロック塀と「ズルズル」してますから。今回の傷ではないでしょう。バスには傷が……。
「フフン、うちのシビックの勝ちや!」
言うてる場合やありません。どうしたらエエのでしょう? バスの運転手は、
「すんまへんな。決まりですぐに届けんとあきまへんのや」
仕方ありません。バスは運転打ち切りなんですと。乗客がゾロゾロと降りて来はります。みんな「何があったんや?」という顔をしてはります。「ズルズル」に気がついてはらへんのですな。けど申し訳ない。「ズルズル」のために後続のバスに乗り換えてもらわんといかんのです。これはちょっと辛かった……。
次のバスはすぐに来て、みんな乗り込んで行きはります。…よかった。そんなに待たせなくて。なんせ団体ですぐに3台ほど来る路線ですから。その点は助かりました。
もう一度、バスの傷をよく見ました。どうもこれは傷というより、うちのバンパーのゴムが付着してるだけのような気がしますね。でも「ズルズル」したことは事実です。運転手さんは携帯で何処かへ連絡してはります。電話を切ると私に向かって、
「寒いなあ。…バスの中へ入りまひょか」
さばさばという感じで、ベテランの運転手さんは声をかけてくれました。事故の相手のバスに乗り込むとは思わなんだけど。警察と京都市交通局の事故処理係が来るそうです。
「うちの処理係は来るのが遅いんですわ」
警察はすぐに来るようです。「パトカーがサイレン鳴らして来たら、たいそうなことになるぞ…」と思うてたら、なんとポリさん2人は自転車で走って来はりました。サイレンなしで。初めから付いてませんわ。そこの交番から来はったんですな。
「運転免許証を出してください」
私はスッと出しました。市バスの運転手、カバンをゴソゴソ…。
「エライこっちゃ、免許証がない!」
今度は運転手が真っ青。「おいおい、こんなことでクビが飛ぶんかい?」と言いながら、必死になって捜す運転手さん。まさかそこまでは行かんやろけど。すみませんねぇ、ボクのために。やっと見つかった時は私もホッ……。
あとは事故処理係を待つだけです。これから私はどう処理されるのでしょう? 顔色が戻った運転手にそれとなく探りを入れると、
「たいしたことないと思いまっせ。これね、ひょっと怪我人が出てたら人身事故でエライことなんやけど」
なるほど。そんなもんなんですね。けど、なんぼか賠償金を出さんならんのではないかとヒヤヒヤしておりました。
たっぷり待たされて、事故処理係はやって来ました。いよいよお裁きを受けます。
バスのわき腹黒線を見た処理係は開口一番、
「大丈夫です。事情をお聞きするだけです」
どうやら金は要らんらしい。ホッとしたけど、こういうことはもっと早く知りたいもんです。状況を説明して釈放されることになりました。
「これで帰ってもらったらけっこうです。けど、これはもしものことですが、ひょっとしてお客さんの中で後になって、バスに乗ってて事故でこけたとか、むち打ちになったとか言うてくる人がないとは言えんのですわ。その時はよろしく…」
いややがな、そんなん。「ズルズル」でこけるかいな? そんな悪人がないことを祈りながらバスを降りました。たっぷり1時間はバスの中で過ごしたでしょう。
それからN眼科へ行ったら、午前の診察が終わって閉まってます。拍子の悪い、うちの嫁のコンタクトレンズはどうなるの?
で、この事故からの教訓です。
家から歩いて5分のところへ車で行くのはやめましょう!
え? なんですか? もう一つの事故ですか? それはまた今度……。
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