2003-03-30
 バリ島珍道中(5)
 
とうとうイラクで戦争が始まってしまいました。私があんなに反対したのに…。ま、どないもなりませんが。今から考えると私がバリ島へ行った頃は平和でした。ニューヨークの同時多発テロが起こる1週間前。…という訳で米二一家バリ島珍道中の本当の最終回をお届けします。

バリはずいぶん土産物屋の多いところです。一大ショッピングセンターになっているところから、押し売りみたいな物売りまで…。本当に様々でした。

昔からハワイのお土産といえばあのマカデミアン・ナッツのチョコレートでした。それがハワイだけでなく他の島にもあるらしいと何かで知ったのですが、ありましたありました。バリにもちゃんとありました。もう何処も一緒という感じで積み上げてありました。これこそアホの一つ覚えやなぁ、こんなもん誰が買うかい、と私は思っておりました。

人の考えは時々変わるものです。私の場合はコロコロと変わります。チョコを買って帰ることにしました。いろいろ土産を見て回ったけど、大勢でちょっとつまめる物といえば、もうこれしかないのです。いやぁ、マカデミアン・ナッツのチョコは最高です。バリ土産の代表ですな。

それでも南国ですから、暑さで溶けては困るので、チョコを買うのは帰りの空港でと決めました。いよいよバリともお別れの日。帰りも夜行便です。バリのデンパサール空港には待合室の近くに土産物屋、免税店がアホほどありました。もちろんマカデミアン・ナッツのチョコレートも売っていて、値段は8ドルとしてありました。さすが空港ですね。インドネシアのルピアではなくドル建てでした。なるほどと納得したけど、よう考えたらドルなんか持ってませんがな。

こういう店のありがたいところはわりと日本語が通じることです。私は2つ欲しかったので計16ドル。「どうしたらええかな?」と思っていたら、そこの店のお姉さんが明るい声で、

「ハーイ! 円で払っていいわよ。2,400円ねー」

ちょっと高いと思ったけど、悲しいことに私はかけ算の暗算ができません。言われたとおり2,400円払って店から出ました。気の弱い私は、そのお姉さんから見えないところまで来てから、肌身離さず持っていた電卓で計算してみました。当時、1ドルは120円だったから、120×16で、答一発1,920円。480円もぼったくられてる…。もう一度計算。2,400÷16で答一発、1ドルが150円になってる…。

勇気を出して掛け合いに行きました。店によってレートが違うこともあるので、

「ちょっとお姉さん、ここの店の1ドルはなんぼ?」

「ハーイ! 125円ねー」

相変わらず明るい声で言ってます。125円なら許せる範囲です。前日のキンタマーニ高原ツアーも1ドル125円でしたから。お姉さんの目の前で電卓を押してみました。125×16はちょうど2,000円。私はよその店にも聞こえるような大きな声で、

「400円、バーック!」

「オー、ごめんなさい、ごめんなさい。間違えましたー」

口では謝ってるけど、こいつ目が笑うてる。バカにしてよる。レジに手を突っ込むとそのコインを私に握らせて、

「ハーイ! 400円ねー」

見ると、200円しかない。

「これは200円じゃーッ」

「オー、ごめんなさい、ごめんなさい」

私はやっとお金を取り戻して店を出ました。その後ろから明るいお姉さんは、

「オー、ホントにごめんなさい。間違い、間違いねー」

こいつ、確信犯でっせ。たぶん誰にでもやってるのでしょう。バリで出会った最後の人がこのお姉さん。わたしゃ、飛行機で寝られませんでしたぜ。