2002-11-29
 バリ島珍道中(3)
 
お久しぶりです。今まで2回に渡って昨年のバリ旅行のご報告をしてきましたが、そのバリで先月12日、大きな爆弾テロがありました。あんなに穏やかですばらしい島で何故? …という思いで一杯です。うちの家族のバリ島珍道中を書いている私自身が愚かに思えてきました。もうバリ旅行の続きを書くのは止めにします。

と思ったのですが…。中途で止めるのは私の理念にも反することなので、やっぱり書きます。(どないやねん?)もし被害に遭われた方、もしくは関係者の方がいらっしゃいましたら、前もってお詫びをいたします。申し訳ございません。…では始まります。

バリに着いて2日目は観光することにしました。オプショナル・ツアーを申し込んだのです。行き先は…。ちょっと言いにくいのですが、キンタマーニ高原。パソコンで入力すると、まず「金玉―に」と変換されてしまいます。賢そうで考えることは人間と一緒ですな。ヤラシー…。

で、このツアーの料金は大人50ドル、子ども25ドル。うちの場合、合計で150ドルになりました。当時1ドルは120円前後でしたが、ここでは125円で換算するそうです。肌身離さず持っている電卓で計算すると18,750円。昼食も付いてるので、ま、こんなもんかと前日に電話で予約しました。

てっきりバスツアーだと思ってました。朝、やってきたのはワンボックスカー1台。うちの家族貸し切りなのです。なんと贅沢な! しかも運転手とガイドさんと二人も居ます。

このガイドさんが日本語ペラペラで、いろんなことを教えてくれました。まず時候の挨拶から。私が「バリは思ったより暑くない。日本は38℃もありまっせ」と言うと、彼は両手を広げて「Oh,No!」。私には「ようそんなクソ暑いとこに住んではりまんな、あんさんは」と聞こえましたぜ…。バリは暑くてもせいぜい32℃ぐらいなんですと。そういうと汗はかきませんでしたねぇ。

車窓を見渡すといろんな動物がうろついています。鶏を飼っている家も多いようです。バリでも犬を食べるそうです。もちろんペットではなく野良犬を取って食べるのだとガイドさんが教えてくれました。見ると、野良犬がウヨウヨ居ます。こいつら、命がけで道を歩いとる…。

インドネシアはイスラム教が主流ですが、バリ島は特殊でヒンドゥー教が90%だそうです。したがって牛肉は食べないとのこと。なのにマクドナルドはあるんです。犬の肉を使うのかと思ったら、「牛肉です」と否定されました。ほな、誰が食べに行くねん?

道を走ってる車やバイクはほとんど日本車で、新しいのから古いのまで様々です。日本ではもう見られない車もありました。うちの車はシビックです。これもたいがい古い(13年)のですが、初代のシビックを見た時は感激しました。ちゃんと走ってる!

バイクが異常に多い。普通の家では車よりバイクなんだそうです。日本で言えば原付です。これに3、4人乗ってるのもあります。なるほど、車は要らんか…。

信号がありません。日本ならあって当然という交差点でも無いんです。ラッシュ並の交通量なんですよ。それでもほとんどない。日本と同じ左側通行なので右折がたいへんです。T字型の交差点なんか中央分離帯があって、はじめから右折できません。どうするかというと、一旦左折してしばらく行ってからUターンするのです。バイクから特大のタンクローリーまでUターンするんですから…。これでよく事故が起こらないものです。(ホントは起こってるらしい)

ウブド(芸術の町)で美術館巡りをして、小さい絵を一つ買って、金玉―に…、もといキンタマーニ高原へさしかかった頃、ちょうどお昼になりました。景色の良いところで昼食です。

ここでガイドさんからの注意。「物売りがたくさん寄って来ますが、決して相手になってはいけません。目も合わさず通り抜けなさい」とのこと。車を降りるとおっしゃる通り、アホほど物売りが集まって来ました。いろんな物を売ってます。

「ゴマイ、センエン、ゴマイ、センエン…」と大声で連呼してるおばちゃんが居てます。目を合わさんようにチラッと見るとTシャツを売ってます。5枚で千円なら安い…。でも前にこんなシャツは一ぺん洗濯したら溶けてしまうと聞いたことがあります。ホンマやろか。試しに買うたろか、と思たけど止めときました。

ここのレストランもバイキング料理でした。また食べ過ぎてしまう…。味噌味のような焼き鳥「サテ」がおいしかったです。

レストランを出て駐車場に向かうと、また物売りがワーッと押し寄せて来ます。さっきのTシャツのおばちゃん、今度は「ハチマイ、センエン、ハチマイ、センエン…」。もうダンピングや…。

この商魂はどこでも同じ。帰りに寄ったお寺、タンパクシリンのティルタ・エンプルも正にそれでした。お寺の入口と出口が別になっていて、帰りは土産物屋の間を通らないと出られないのです。折悪しく雨も降ってきました。狭い道の両側をズラーッと土産物屋が並んだ中をうちの家族とガイドさんは歩いて行きました。店の人は罵声を浴びせるようになんか言うてます。ウィンドウ・ショッピングもできず、市中引き回しの刑で歩かされてるみたいです。私はすっかり罪人気分…。

やっと通り抜けて駐車場まで来たら、今度は物売りがワーッ…。私は左手で傘を差して、右手に荷物を持っていました。一人のおばちゃんがサッと近づいてきて、私の左手、傘を持つ指と傘の柄の間に、バナナの小さいやつを無理矢理に捻じ込んできました。「こいつ何するねん」と思っていると、今度はそのバナナの皮を剥いて、恐ろしい力で私の口へ押し込むではありませんか。油断も隙もありません。アッという間にバナナは口へ入ってしまいました。なんで口開けてたんやろ?

私もイヤラシイやおまへんか。食べてしもたんです。べつに食べとうなかったけど…。食べたら、このちっちゃいバナナおいしいんです。甘いんです。これが失敗でした。

「食ベタノナラ、買イナサイ、食ベタノナラ、買イナサイ…」と痛いところを突いてきます。「ハーイ、5万ルピア」と言いながら、バナナ1房を勝手に私のカバンへ入れてしまいました。5万ルピアはだいたい700円…。いくらなんでも高いので「3万ルピア」と言うと、「ハイ、OKネ」。すぐに負けよった。もっと安く言えばよかった…。

そんなときに限って細かいお金が無い。5万ルピア札を出して「釣り、釣り」と言うと「ハーイ、オツリハ2万ルピア。コレ2万ルピアネ…」。言いながらバナナを1房、またカバンへ入れよった…。「ハーイ、アリガトネ。バイバイ」とおばちゃんは逃げるように立ち去ったのでありました。お釣りの現物支給は初めてですわ…。

ふと見ると、うちの家族はゲラゲラ笑ってます。ガイドさんまで笑てはる…。人の良いお父さんはバリへ来ても傷ついたのでした。けど、こんなおばはん、大阪にも居るで…。